Wolfram Computation Meets Knowledge

Wolfram|Alpha日本語版 – 日本語の数学の質問に日本語で答えてくれる

Wolfram|Alpha senior developer Noriko Yasui explains the basic features of the Japanese version of Wolfram|Alpha. This version was released in June 2018, and its mathematics domain has been completely localized into Japanese. Yasui shows how Japanese students, teachers and professionals can ask mathematical questions and obtain the results in their native language. In addition to these basic features, she introduces a unique feature of Japanese Wolfram|Alpha: curriculum-based Japanese high-school math examples. Japanese high-school students can see how Wolfram|Alpha answers typical questions they see in their math textbooks or college entrance exams.


今年6月,遂にWolfram|Alpha(ウルフラムアルファ)日本語版がリリースされました.英語で入出力を行う通常版Wolfram|Alphaは,「計算知識エンジン」としてウェブサイトで2009年5月に公開が開始されました.以来9年の間に順調に着実に成長を続け,米国内外の多くのユーザーに支持され,現在では,最も広く知られているウルフラム製品といえるでしょう.通常版Wolfram|Alphaは英語での入出力に限られているものの,公開当初から他言語の地域からのアクセスや他言語での入力そのものも多くありました.そういったことを背景に自然の流れとして,Wolfram|Alphaの多言語化プロジェクトが走り出してから約2年ほどになり,この日本語版が初めての他言語版ウルフルラムアルファのリリースとなりました.

ではまず,Wolfram|Alpha日本語サイト(http://ja.wolframalpha.com)のトップページを覗いてみましょう.

トップページは,質問を入力する窓と,各種分野の入力例へのリンク集からなります.利用方法は,「質問を入力する」とその「答えが出力される」といったシンプルなものなのですが,その「質問の入力」が漠然としていて難しいかもしれません.検索エンジンにおける「検索ワードを入力する」とは異なるものだという認識がキーになってきます.現在の日本語版Wolfram|Alphaでは,数学のみがサポートされており,数学の問題を聞くと答えを返す,ある意味,「高度な電卓」として利用するとその便利さ有用性が実感できるかと思います.トップページには,現在日本語でサポートされているカテゴリが,日本語で書いてあります.それでは,その中の一つ,「高等学校 数学」のカテゴリを見てみましょう.

このカテゴリには,日本の過去の大学入試やセンター試験に出題されたものを参考にして作った入力例が各科目ごとに集められています.入力方法や入力表現に困ったときは,まずはここの例を参考にして頂けるといいかと思います.入力例の一つ,多項式の因数分解から見ていきましょう.”x^4+2x^3y-2xy^3-y^4を因数分解する“と入力すると,以下のような出力が得られ,入力した多項式は,(x-y)(x+3)^3に因数分解できることがわかります.質問に対する答えである因数分解の結果の他に,与えられた多項式の3次元グラフや,等高線グラフも同時に出力されます.

多項式を入力するには,ちょっとしたポイントがあります.例えば,四則演算のための演算子には,一般に書籍,印刷物で使われる”+”,”-“,”×”,”÷”なども利用できますが,”×”や”÷”よりも,キーボードでのタイプには,”*”や”/”を利用した方が入力効率がいいですし,先ほどの例は,”(xの4乗)+2(xの3乗)y-2x(yの3乗)-(yの4乗)を因数分解する” と入力することもできますが,累乗の演算子には”^”を利用した方が効率的です.また,平方根の入力には,”\[Sqrt](x^2)”や”(x^2)の平方根”などとすることもできますが,”(x^2)^(1/2)”とすれば,3乗根などの累乗根入力の際にも応用ができます.実は,このように入力すると効率的である,という他に,そうやって入力された数式の方が,Wolfram|Alphaにとっては理解しやすいものになるので,タイムアウトなどの発生を減らすことができるという利点もあります.その他、各種数式の入力方法は,「数学を学ぶ学生のための入門チュートリアル」を参考にしてください.

現在公開されているバージョンは,小学生レベルの算数から大学数学まで非常に広い範囲の数学をサポートしています.通常版のWolfram|Alphaでは数学の他に,人文,化学,経済,歴史,アート,地理,など1000以上の分野をサポートしています.そんな中でも,数学に関する質問は多く,積分計算は,特に多い質問の一つになっています.先ほどの多項式を入力する上でのポイントを使って,”x^2 sin^3 xの積分“とすれば,プロットなどの関連情報とともに結果が出力されます.

では,次の積分はどのように入力すればいいでしょうか.

色々な表現で入力できると思いますが,一つの方法としては,入力する際は,この式を「声に出して伝える」ときの表現のような自然な言葉で行うとうまくいきます.たとえば,上の式は,”1/(cos(x)+2)の0から2Piへの積分“や,”1/(cos(x)+2)を0から2Piの範囲で積分“,”1/(cos(x)+2)の0から2Piにおける積分“などと入力することができます.また,なるべく数式に近い表現で入力した “積分 (0->2Pi) 1/(cos(x)+2) dx“や,”積分(0, 2Pi) 1/(cos(x)+2) dx“などでも同じ結果が得られます.また,もう一つ,全く異なる方法として,”積分計算“と入力し「積分計算機」を起動して,多項式や積分領域などを入力して結果を得る方法もあります.

結果出力の中に,「ステップごとの解説」というリンクがあります.これは,有料のWolfram|Alpha Proの機能の一つ「ステップごとの解説」で,結果に至るまでの考え方や途中計算の順を追ったヒントと解説が得られます.数学,化学,物理の60を超える分野がサポートされていますが,日本語版Wolfram|Alphaでは,そのうち,数学関連のものが日本語化されています.通分が必要な分数のたし算(例:”1/4+2/3“)から,数学的帰納法での不等式の証明(例:”n>0 に対して (3n)! > 3^n (n!)^3 を数学的帰納法で証明“)など幅広い分野の日本語での「ステップごとの解説」が得られます.

日本語版Wolfram|Alphaがリリースされてから早3ヶ月.まだまだ課題は多く,ようやく「走り出した」にすぎませんが,基本的なものは日本語化されていてその有用性を感じて頂けるかと思います.質問を入力したにもかかわらず正しい出力が得られなかったり,必要な情報が英語のみのサポートだったり,何か問題があれば,出力画面の一番下の「フィードバックをお寄せください」のところからコメントをお願いします.ご意見ご感想は,今後の開発の参考にさせて頂き,問題は順次修正していきます。英語版Wolfram|Alphaと同様,常に「アルファ版」として,終わりなく機能や性能を改良,向上させていきたいと思っています.

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